聞き流し注意!賃貸借契約書や重要事項説明書とは?原状回復、更新料など解説

聞き流し注意!賃貸借契約書や重要事項説明書とは?原状回復、更新料など解説

【監修】角名 達矢

(株)ホンネ不動産創業者、宅地建物取引士、不動産業界20年以上。22歳の時に就職した会社にて不動産業界の慣例・慣習があまりにもひどく衝撃を受け、実務を経験した後27歳で独立。TVメディアに多数出演。賃貸仲介・売買仲介ともに経験豊富です。

賃貸契約を結ぶ際に交わされる「賃貸借契約書」と「重要事項説明書」は、トラブルを避けるために非常に重要な書類です。しかし、専門用語が多く、内容を十分に理解しないまま契約してしまう人も少なくありません。

本記事では、これらの書類の役割や、特に注意すべきポイントについて詳しく解説します。

そもそも賃貸借契約書や重要事項説明書とは?

賃貸物件を借りる際に必ず交わすのが「賃貸借契約書」と「重要事項説明書」です。どちらも契約時に重要な書類なので、しっかりと内容を確認することが大切です。

賃貸借契約書は、賃貸物件を借りるための契約書。一方、重要事項説明書は、不動産会社(宅地建物取引士)が借主にとって重要になる事項(建物の状況、賃料、解約、利用条件など)の内容を説明し、賃貸契約を結ぶかどうかの確認を得るためのものです。宅地建物取引士が説明する重要事項説明書の内容に納得した後、賃貸契約を結ぶ流れとなります。

<賃貸借契約の流れ>

  • 宅地建物取引士による『重要事項説明書』の内容説明
  • 重要事項説明書の内容に納得した後、借主が『重要事項説明書』に署名・捺印
  • 不動産会社が『賃貸借契約書』を提示
  • 借主が『賃貸借契約書』に署名・捺印する
  • 契約成立

賃貸借契約書について

賃貸借契約書とは、賃貸物件を借りる際に貸主(オーナー・管理会社)と借主(入居者)の間で取り交わす正式な契約書であり、賃貸借関係に関する権利・義務を明確にするための重要な書類です。契約内容に基づいて、賃料の支払いや退去時のルール、修繕の責任範囲などが決まります。

なお、賃貸借契約の成立後、万が一重要事項説明と契約書の内容の齟齬にがあったとしても、基本的には契約書の内容が優先されます。実際の契約で効力をもつのは「賃貸借契約書」となっています。

契約後のトラブルを避けるには、重要事項説明を受けた後、しっかり検討のうえ、疑問点を解消してから契約に臨むようにしましょう。

賃貸借契約書
目的借主と貸主の賃貸借契約を締結するための書類
作成者貸主または管理会社(宅地建物取引業者が作成することが多い)
説明義務署名・捺印すれば成立(説明義務なし)
記載内容賃貸借契約の具体的な条件(家賃・期間・禁止事項・特約など)
交付のタイミング契約締結時
法的義務貸主が契約を交わすために作成(法的義務はないが慣習上交付)

【賃貸借契約書の主な記載内容】

  • 契約当事者の情報
    貸主および借主(契約者)の氏名・住所・連絡先、連帯保証人(保証会社利用時は保証会社情報)
  • 物件情報
    物件の所在地・名称・部屋番号、建物の構造や間取り
  • 賃貸条件
    賃料、共益費・管理費、敷金・礼金・保証金などの初期費用、更新料の有無・更新手数料、支払い方法(口座振替・振込など)
  • 契約期間と解約条件
    契約の開始日・終了日(一般的には2年契約)、自動更新の有中途解約時の違約金の有無や退去通知期間(通常1~2ヶ月前)無、
  • 禁止事項
    ペット飼育・楽器使用の可否、住居以外での使用(事務所利用など)の可否、民泊やシェアハウス利用の禁止など
  • 修繕・原状回復の範囲
    設備故障時の修理負担、退去時のクリーニング費用、故意・過失による損傷の修繕義務
  • 特約事項
    退去時のハウスクリーニング費用負担、途中解約時の違約金、借主の加入が義務付けられる火災保険、近隣トラブルに関する注意事項
  • 契約締結日と署名・捺印
    契約成立を証明するための貸主・借主の署名および捺印

重要事項説明書について

重要事項説明書(通称「重説」)は、不動産会社(宅地建物取引士)が契約前に借主へ説明する書類です。契約する物件の基本情報や、契約解除の条件、更新料、管理会社などが明記されています。これにより、借主は契約内容を理解した上で契約を締結することができます。

重要事項説明書
目的借主が契約する前に物件や契約内容の重要事項を説明する書類
作成者宅地建物取引士が作成
説明義務宅建士が契約前に借主へ対面で説明しなければならない
記載内容物件の基本情報、契約条件、リスクなど借主が知るべき重要事項
交付のタイミング契約締結前
法的義務宅建業法に基づき、宅建士が説明しなければならない(義務)

宅地建物取引業第35条では、宅地建物取引士が賃貸借契約の重要事項について記載した書面(重要事項説明書)を交付して、お客様と賃貸借契約が成立するまでの間に対面で説明することが、義務付けられています。

【重要事項説明書の主な記載内容】

  • 物件の概要
    所在地・構造・専有面積、建物の耐震性・用途制限
  • 契約条件
    賃料・敷金・礼金・更新料、退去時の原状回復義務
  • 管理に関する事項
    管理会社の有無・連絡先、修繕負担区分(貸主・借主)
  • 法令に基づく説明
    重要事項(例:再建築不可、接道義務の有無)、水害リスクや土砂災害警戒区域内かどうか
  • 借主にとって不利益となる特約
    退去時の費用負担、原状回復の範囲

一番大事な重要事項説明書の注意すべき点を解説

重要事項説明書には、多くの情報が記載されていますが、特に注意すべきポイントがあります。以下の項目は、契約後のトラブルを避けるために必ずチェックしておきましょう。

重説[1]:建物と部屋の設備の整備状況について

物件に付属する設備(エアコン、給湯器、ガス設備、温水洗浄便座など)の内容や状況、修繕の責任がどちらにあるのかが記載されています。入居前にしっかり確認しておくことで、設備トラブルを未然に防ぐことができます。

ここでは特に、住居内にあるものが「設備」なのか「残置物」なのかしっかり確認しておきましょう。物件に付属する設備の場合、自然的に故障した設備は、大家さんや不動産屋が修理・交換を行います。しかし、残置物の場合は対応はしてくれないため、自分で修理費用を負担することになります。残置物が不要な場合は、契約前に処分するよう不動産屋に伝えることが大切です。

重説[2]:借賃や授受される金額について(初期費用など)

契約時に支払う初期費用や、家賃の支払い方法、管理費の詳細などが記載されています。家賃や敷金・礼金、更新料などの他に、インターネット使用料やケーブルテレビ料など、賃料以外の費用が発生する場合もあるため、しっかり確認しましょう。また、記載されている金額が相違している場合もあるため、金額の確認は重要です。

毎月の家賃が記載されている項目では、支払日や支払い方法についても明記されているため、毎月の支払い計画を立てる際に重要な情報となります。支払い方法が自動引き落としなのか、指定の口座に振り込みなのか確認し、滞納しないように気を付けましょう。

重説[3]:更新に関する注意事項(更新料など)

契約期間(何年間の契約か)についてや、契約を更新する際にかかる費用や、更新の条件が記載されています。

普通借家契約の場合、契約期間は2年間、更新料は家賃の1ヶ月分の場合が多いです。更新料の金額に規定はなく、物件によって設定が異なります。なお、契約期間や料金に誤りがある場合もあるため注意が必要です。

その他、不動産会社に支払う「更新手数料」や「火災保険更新料」、保証会社を利用している場合の「保証料」などが発生する場合があります。更新料や必要な費用は必ず確認しましょう。

重説[4]:解約する際の注意点について(退去予告など)

退去する際に必要な手続きや、解約(退去)する際にどのくらい前に伝えるべきか(解約予告期間)が明記されています。解約予告は一般的に、退去希望日の1~3ヶ月前に申し入れが必要な場合が多いです。

解約予告期間より遅れて退去の意志を伝えた場合は、余計な家賃を支払うことになる場合もあります。退去時に余計な費用がかからないよう、事前に確認しておくことが重要です。

重説[5]:管理の委託先に関する事項(管理会社どこか)

物件の管理会社の情報が記載されており、入居開始後にトラブルが発生した際の連絡先としても重要な項目です。契約した不動産屋と連絡先が異なる場合や、大家さんが連絡先になっているケースもあるため、しっかりと確認しておきましょう。

重説[6]:用途その他の制限について

物件の使用用途に関する制限(住居専用か、事務所利用可能かなど)が記載されています。例えば、ット飼育や楽器使用の可否や民泊禁止の条件が含まれていることが多いため、契約前に確認しましょう。

重説[7]:契約の解除に関する事項(禁止事項など)

契約解除の条件や、借主が守るべきルール(騒音トラブル、無断リフォームなど)が記載されています。違反した場合は、契約解除や違約金の請求が発生する可能性があるため、必ず確認が必要です。

重説[8]:契約の種類・期間に関すること

契約が「普通借家契約」なのか「定期借家契約」なのかが明記されています。特に定期借家契約の場合は契約更新ができないため、注意が必要です。

重説[9]:特約事項について←これが一番大事

重要事項説明書の中で最も注意すべきポイントが「特約事項」です。ここに、通常の契約にはない特別なルール(例:原状回復費用の負担など)が記載されることがあります。借主にとって不利となる特約が記載されている場合もあるため、細かい条件を見逃さないよう、慎重にチェックしましょう。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、特約が成立するための条件が定められており、契約者にとって、あまりにも不利になる特約は認められません。

以下は、特約事項が、どのように記載されているかの具体例です。

<ルームクリーニング費用の特約>

解約時ルームクリーニング費用30,800円(税抜28,000円)は借主の負担とし、契約時に貸主へ支払うものとし、入居期間に係らず解約時の返金はしないものとする。尚、消費税率が変更された場合はその税率を適用するものとする。

<短期解約違約金の特約>

借主の都合により、契約開始日から1年未満に解約した場合は解約違約金として賃料及び管理費の1ヶ月分を貸主に支払うものとする。

原状回復費用や敷金返還はどこに書いてる?

敷金については賃貸借契約書に書いてる事が多い

敷金に関する取り決めは、通常、賃貸借契約書に記載されています。敷金の返還条件や、どのような費用が差し引かれるのかを事前に確認しておきましょう。

原状回復は重要事項説明書の特約欄をチェック

退去時の原状回復に関するルールは、重要事項説明書の「特約事項」に記載されることが多いです。ルームクリーニング費用の負担についてや、壁紙や床の修繕費用の負担が明確になっているかを確認しましょう。

東京都の物件に限り、紛争防止条例を確認

東京都では、賃貸借契約に関するトラブルを未然に防ぐために、「東京都住宅確保要配慮者居住支援・紛争防止条例」(通称:紛争防止条例)が制定されています。

この条例は、貸主(オーナー・不動産会社)と借主(入居者)との間で発生しやすい賃貸契約のトラブルを防ぐことを目的とし、契約時に貸主側が一定の事項を明示することを義務付けています。

<紛争防止条例のポイントと注意点>

  • 契約前に説明を受ける義務がある
    不動産会社や貸主は、契約前に借主に説明書を交付し、内容を理解してもらう義務がある。
  • 原状回復のガイドラインに基づいたルール適用
    退去時の修繕費負担について、国土交通省の「原状回復をめぐるガイドライン」を参考にするため、借主が不当に高額な請求をされることを防げる。
  • 違反した場合のペナルティ
    不動産会社や貸主が説明義務を怠った場合、東京都から行政指導や指摘を受ける可能性がある。
  • 敷金・退去時費用について透明性が高まる
    敷金トラブルが多いため、この条例によって明確な基準が設けられている。

<紛争防止条例を守ることで得られるメリット>

  • 退去時の原状回復費用が明確になり、不当な請求を防げる
  • 敷金の扱いについて事前に確認できるため、返還時のトラブルを回避できる
  • 賃貸契約のルールを事前に理解できるため、安心して契約できる

不明点あれば不動産屋にすぐ確認しよう!

契約内容に不明点がある場合は、不動産会社に質問することが重要です。特に、契約後のトラブルを避けるためにも、納得がいくまで確認しましょう。

賃貸借契約書や重要事項説明書のまとめ

賃貸契約を締結する際に必要な「賃貸借契約書」と「重要事項説明書」は、借主と貸主の権利や義務を明確にするために非常に重要です。これらの書類を正しく理解しておくことで、契約後のトラブルを防ぐことができます。特に、特約事項や退去時のルールについては注意が必要です。

賃貸契約を結ぶ際には、「賃貸借契約書」と「重要事項説明書」の内容を正しく理解しておくことで、契約後のトラブルを防ぐことができます。特に特約事項や退去時の原状回復費用のルールに注意することが重要です。

契約前に確認すべきポイント

  • 契約の種類と期間:普通借家契約か定期借家契約かを確認。
  • 更新料の有無:契約更新時にかかる費用を確認。
  • 家賃や管理費の支払い条件:振込期日や支払い方法を明確にする。
  • 特約事項の内容:退去時の修繕費負担など、特別な契約条件を把握する。
  • 敷金・礼金の扱い:敷金の返還条件や礼金の有無を確認。

<退去時の重要ポイント>

  • 原状回復の範囲:通常の使用による損耗は借主負担にならないことを理解。
  • 退去予告期間:通常1〜2ヶ月前に通知が必要。
  • 敷金の精算方法:退去後にいくら戻ってくるのかを契約時に確認。

これらのポイントを押さえ、契約書や重要事項説明書の内容をしっかりと理解した上で契約することが大切です。特に不明点がある場合は、不動産会社に確認し、納得のいく契約を結ぶようにしましょう。

賃貸契約時の書類や必要なもの

賃貸契約を結ぶ際には、身分証明書や収入証明など、さまざまな書類が必要になります。これらの書類が揃っていないと契約手続きが進まず、希望の物件を逃してしまう可能性もあります。

スムーズに契約を進めるために、必要な書類を事前に準備しておきましょう。ここでは、契約時に求められる書類とその内容について詳しく解説します。

身分証明書(運転免許証や保険証、パスポートなど)

本人確認のため、運転免許証、健康保険証、パスポートなどの身分証明書の提示が求められます。多くの不動産会社ではコピーの提出も必要になるため、契約時には原本とコピーを持参しましょう。

住民票(基本的に3ヵ月以内のものが必要)

住民票は、契約者が現在どこに住んでいるかを証明するために必要です。多くの物件では、発行日から3ヶ月以内の住民票の提出が求められます。市区町村の役所やコンビニの証明書発行機などで取得可能です。

収入を証明する書類(源泉徴収票、納税証明書など)

契約者の収入を証明するために、会社員であれば源泉徴収票や給与明細、自営業者やフリーランスであれば確定申告書や納税証明書の提出が求められることが一般的です。収入証明が必要な理由は、貸主が家賃支払い能力を確認するためです。

銀行口座印と通帳

家賃などの支払い方法として、銀行口座からの自動引き落としが設定されることがあるため、銀行口座印(届出印)と通帳を用意しておきましょう。口座情報を正確に伝えるために、キャッシュカードでも対応可能な場合があります。

印鑑(シャチハタ不可なので注意)

賃貸借契約書に押印が必要な場合、認印や実印が求められることがあります。シャチハタは契約書類では使用できないため、事前に認印を準備しておくことをおすすめします。実印が必要な場合は、役所で印鑑登録をしておくとスムーズに契約が進みます。

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【監修】角名 達矢

(株)ホンネ不動産創業者、宅地建物取引士、不動産業界20年以上。22歳の時に就職した会社にて不動産業界の慣例・慣習があまりにもひどく衝撃を受け、実務を経験した後27歳で独立。TVメディアに多数出演。賃貸仲介・売買仲介ともに経験豊富です。