「なぜ住む前にお礼のお金を払わなければならないの?」「礼金なんて無駄な出費はしたくない」と感じていませんか?賃貸物件の契約時にかかる初期費用の中でも、特に納得感を得られにくいのが「礼金」です。敷金は退去時に戻ってくる可能性がありますが、礼金は一度払ったら戻ってこない、いわば「掛け捨て」の費用です。
本記事では、礼金が存在する本当の理由や、払いたくない時の具体的な対処法、交渉のコツを詳しく解説します。

礼金を払うのはおかしい?
賃貸契約において「礼金」という名目でお金を支払うことに違和感を覚える人は非常に多いです。特に初めての一人暮らしや、海外から帰国された方にとっては、「サービスを受ける側が、なぜ提供側にお礼をするのか」が不思議に映るのも無理はありません。
礼金は払わないとダメ?違法じゃないの?
礼金が設定されている物件を借りる場合、その支払いを拒否して契約することは原則できません。礼金はあくまで契約条件の一部として提示されているため、支払いに同意しないのであれば、オーナー(大家さん)側も「それならお貸しできません」と断る権利があるからです。
また、礼金そのものが「違法」ではないかという疑問の声もよく聞かれますが、現在の日本の法律では違法とはされていません。民法などの法律において、契約自由の原則に基づき、貸主と借主が合意の上で支払う金銭については制限がないためです。ただし、公序良俗に反するような法外な金額(家賃の10ヶ月分など)であれば争う余地が出てきますが、一般的な1〜2ヶ月分の設定であれば、法的に「おかしい」と断じることは難しいのが現状です。
礼金が必要な物件の割合と相場とは
現代の賃貸市場において、すべての物件に礼金があるわけではありません。国土交通省の調査や大手不動産ポータルサイトのデータによると、礼金が必要な物件の割合はおよそ50%〜60%程度と言われています。近年は「敷金・礼金ゼロ」を売りにする物件が増えているため、昔に比べれば礼金なしの物件は探しやすくなっています。
礼金の相場については、家賃の「1ヶ月分」が最も一般的です。人気エリアの新築マンションや、ハイグレードな物件、あるいは繁忙期(1月〜3月)には家賃2ヶ月分という強気な設定も見られます。一方で、築年数が経過した物件や駅から遠い物件など、客付けが難しい条件の部屋では、礼金が0円に設定されているケースが多くなります。
礼金に関する法的規制はあるのか?
礼金について、消費者を保護するための厳格な「上限金額」を定めた法律は、実は存在しません。よく混同されるのが「仲介手数料」ですが、こちらは宅地建物取引業法によって「家賃の1.1ヶ月分(税込)以内」と厳格に定められています。
対して礼金は、貸主に対する「権利金」や「謝礼」としての性格を持つため、貸主が自由に設定できます。過去の裁判例でも、礼金が「不当利得」として返還請求されたケースがありますが、多くの場合は「地域的な慣習として定着しており、法外な金額でなければ有効」と判断されています。つまり、法律に頼って礼金をなくすことは難しく、あくまで市場の需給バランスや交渉によって解決していくべき問題なのです。
なぜ礼金は頭おかしい制度と言われるのか?
サービスを受ける側がお礼を払うという逆転現象が、「おかしい」「意味不明」と批判される主な理由です。しかし、この制度が現代まで生き残っているのには、業界特有の構造や歴史的な背景が絡んでいます。
礼金払う理由1:風習による習慣
礼金の起源は、戦後の住宅難の時代まで遡ると言われています。当時は住む場所を確保すること自体が困難で、部屋を貸してくれる大家さんに対して「住ませてくれてありがとう」という感謝の気持ちを込めてお金を包んだのが始まりです。また、親元を離れる子供の世話をお願いするという「心付け」の意味もあったとされています。
このような古い慣習が、現在も不動産業界の商習慣として色濃く残っています。特に都市部では「礼金を払ってでも住みたい」という需要が供給を上回り続けてきた歴史があるため、大家さん側も「わざわざなくす必要がない」と考えて現在に至っています。合理的でないと感じるかもしれませんが、日本の賃貸文化における「古き良き(あるいは悪しき)名残」と言えるでしょう。
礼金払う理由2:不動産会社への広告費として利用される
現代における礼金の最も「生々しい」役割は、実は大家さんの手元に残るお礼ではなく、不動産会社への「広告費(AD)」の原資になっているという点です。賃貸物件では、大家さんが物件を早く埋めるために、入居者を決めてくれた仲介会社に対して「広告費」という名目でのボーナスを支払うことがあります。
この広告費は家賃の1〜2ヶ月分が相場であり、大家さんが自分のポケットから出すのではなく、入居者から徴収した礼金をそのまま横流しする形で支払われるケースが多いのです。つまり、あなたが払う「大家さんへのお礼」は、実質的には「不動産屋さんが頑張って客付けしたご褒美」に化けていることになります。これが分かると、借りる側としてはさらに納得がいかない気持ちになりますが、不動産流通を回すためのガソリンのような役割を果たしているのが実態です。
礼金払う理由3:入居者を集めるために家賃を安くしている
大家さん側の戦略として、月々の「家賃」を周辺相場よりあえて少し安く設定し、その代わりに初期費用として「礼金」をもらうことで収支のバランスを取っている場合があります。家賃を下げると不動産検索サイトでの表示順位が上がり、内見希望者が増えるためです。
例えば、家賃8.5万円・礼金なしの物件よりも、家賃8万円・礼金1ヶ月の物件の方が、検索条件に引っかかりやすく魅力的に見えます。しかし、2年以内で引っ越す予定がある場合は、「家賃8.5万円・礼金なし」の物件の方が借主側がお得になる可能性が高いです。
このように、礼金は「家賃の先払い」や「収益調整のツール」として機能している側面があるのです。「お礼」という言葉に惑わされず、入居期間全体での総支払額で損得を判断することが、賢い消費者の視点です。
礼金を支払いたくない場合の対処法
「それでもやっぱり礼金を払うのは納得できない!」という方のために、礼金を回避、あるいは軽減するための具体的なアクションプランを提案します。
対処法1:礼金のない物件を選ぶ
最も確実で精神衛生上も良いのが、最初から「礼金なし(ゼロ)」の物件に絞って探すことです。現在は不動産ポータルサイトの検索条件で「礼金なし」を簡単に指定できます。
近年、空室対策として礼金を廃止する大家さんは急増しています。特にUR賃貸住宅や、特定のハウスメーカー系物件、あるいは大手管理会社が運営する物件では「礼金ゼロ」が標準化されているケースも多いです。また、キャンペーン期間中だけ礼金がなくなる物件もあります。最初から「礼金がある物件は候補に入れない」という強い意志を持つことで、納得のいかない支出をゼロに抑えることが可能です。
対処法2:理由を述べて交渉する
気に入った物件に礼金がついている場合、ダメ元で交渉してみる価値はあります。ただし、単に「安くしてください」と言うのではなく、大家さんが首を縦に振りやすい『理由』を添えるのがコツです。
- 「即入居、即契約するので、その代わりに礼金を免除してほしい」
- 「予算が少しオーバーしているが、礼金さえなくなれば今日この場で申し込みたい」
- 「2年以上は確実に住み続けることを約束するので、初期費用を抑えてほしい」
大家さんにとっての最大の恐怖は『空室が続くこと』です。「この人を逃すと次の内見がいつになるかわからない」というタイミングであれば、1ヶ月分の礼金を削ってでも契約を優先してくれることがあります。特に、内見時に「部屋は非常に気に入った」というポジティブな意思を示した上で、最後のひと押しとして交渉するのが効果的です。
対処法3:閑散期に物件を探す
引っ越しのタイミングを調整できるのであれば、不動産業界の閑散期である5月〜8月を狙うのがおすすめです。1月〜3月の繁忙期は、放っておいても入居者が決まるため、大家さんも礼金の交渉には一切応じません。むしろ『礼金2ヶ月でも借りたい人がいる』状態です。
一方で、夏の時期は引っ越し需要が激減し、一度空室になると数ヶ月埋まらないことも珍しくありません。この時期、大家さんは「礼金をゼロにしてでも入居者を決めたい」という心理状態になりやすいため、こちらから交渉しなくても最初から礼金なしになっていたり、交渉がスムーズに通ったりする確率が格段に上がります。時期をずらすだけで、10万円単位の節約ができる可能性があるのです。
| 時期 | 特徴 |
| 1月〜3月 | 最繁忙期 |
| 5月〜8月 | 閑散期 |
| 9月〜10月 | 第二の繁忙期 |
| 11月〜12月 | 穴場時期 |
礼金のない物件を選ぶ際の注意点
礼金がないことは大きなメリットですが、世の中には「うまい話には裏がある」ことも。礼金ゼロの物件を選ぶ際に、見落としてはいけないポイントを整理しました。
注意点1:短期違約金が付いている場合がある
礼金なしの物件で最も多い”縛り”が、『短期解約違約金』です。礼金を受け取らない大家さんにとって、入居後数ヶ月で退去されてしまうと、ハウスクリーニング代や仲介会社への広告費などで完全に赤字になってしまいます。
そのため、契約書に「1年以内の解約は家賃の1ヶ月分を支払うこと」といった特約が付いていることが非常に多いです。もし仕事の都合などで短期間で退去する可能性がある場合は、礼金を払っておいた方が結果的に安く済むこともあります。礼金ゼロに飛びつく前に、必ず「解約時のペナルティ」がどうなっているかを確認しましょう。
注意点2:欠点がある可能性がある
人気物件で礼金がゼロになっている場合、「なぜゼロなのか」という理由を考える必要があります。例えば、以下のような隠れた欠点があるかもしれません。
- 日当たりが極端に悪い、または線路沿いでうるさい
- 事故物件(心理的瑕疵)である
- 近隣に嫌悪施設がある、または住人のマナーが著しく悪い
もちろん、単に大家さんが良心的であるケースも多いですが、立地や条件の割に礼金がゼロ(かつ家賃も安い)物件は、周囲の環境や建物の状態をより念入りにチェックすべきです。内見時に「なぜ礼金が設定されていないのですか?」と不動産屋にストレートに聞いてみるのも、リスク回避のためには有効です。
注意点3:相場よりも安すぎる物件に注意
「礼金ゼロ・敷金ゼロ」かつ、相場より家賃が異常に安い物件は、おとり物件や詐欺的な広告である可能性もゼロではありません。あるいは、月々の管理費が異常に高かったり、入居時に「鍵交換代」「抗菌施工」「安心サポート」など、任意のはずのオプション費用が大量に上乗せされ、結局初期費用が高くなるという巧妙なパターンもあります。
礼金という分かりやすい費用を削る代わりに、目立たない部分でコストを回収しようとする仕組みがないか、必ず『概算見積書』を取り寄せて、トータルの支払額を比較することが大切です。表面上の「礼金ゼロ」という言葉に惑わされず、契約条件の全体像を冷静に分析しましょう。
敷金と礼金がゼロゼロの物件はどう?
いわゆる「ゼロゼロ物件」は、初期費用を極限まで抑えたい人にとって非常に魅力的な選択肢です。しかし、その甘い響きの裏には、入居中や退去時にかかるコストの仕組みが隠されています。
その他費用でかかる場合があるので注意
敷金と礼金がゼロの場合、契約時に支払うお金が極端に少なく済みますが、その分「敷金(担保金)」がないことのリスクを別の名目で補填されているケースがほとんどです。
| 費用名目 | 内容 | 注意点 |
| ハウスクリーニング代 | 清掃費用(原状回復費)の支払い | 入居時・退去時に別途修理費やハウスクリーニング代を支払うケースが多い |
| 保証会社利用料 | 家賃滞納に備える保険 | 敷金がない物件では、ほとんどの場合、加入が必須条件となる |
| 更新料 | 契約更新時に支払う | 通常2年ごとが多い中、1年ごとの更新+高額更新料で費用がかさむことがある |
特に注意したいのが退去時です。敷金を入れている物件であれば、多少の汚れや修繕費はそこから差し引かれが、敷金ゼロの場合は退去時に別途、数万円〜十数万円の「原状回復費用」を請求されることになります(なかには入居時にクリーニング費用を「先払い」する特約がある物件も存在)。つまり、ゼロゼロ物件は「初期費用を別の名目の費用で補填しているだけ」とも言えるのです。
目先の現金を減らせるメリットは大きいですが、退去時にお金がかかることをあらかじめ覚悟し、貯金をしておくといった計画性が求められます。
まとめ
礼金を払うことを「おかしい」と感じるのは、現代の価値観からすれば非常に健全な感覚です。かつての感謝のしるしという風習が、今では業界の広告費や大家さんの収益調整のツールとして形を変えて残っているのが実態です。
【POINT】
- 礼金は法的強制力はないが、契約条件として断ることは難しい
- 業界の構造(広告費など)を知れば、納得感は低くても仕組みが理解できる
- 支払いたくないなら「礼金なし物件」を狙うか、閑散期に具体的な理由を持って交渉する
- 「礼金ゼロ」の裏には、短期違約金や退去時の実費負担などの条件が隠れていることが多い
「礼金」という言葉の響きに振り回される必要はありません。大切なのは、初期費用・月々の家賃・更新料・退去費用のすべてを合算した「トータルコスト」でその物件が自分にとって価値があるかどうかを判断することです。この記事で得た知識を武器に、納得のいくお部屋探しを実現させてください。
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