退去費用で払わなくていいものは?ガイドラインに基づく支払いの判断ポイント

退去費用で払わなくていいものは?ガイドラインに基づく支払いの判断ポイント

【監修】中川 真吾

(株)ホンネ不動産 執行役員、Google口コミ社内No.1、不動産業界6年以上。関西出身。沢山のお客様のお部屋探しをサポートをしています。

退去費用は、賃貸物件の退去時に発生する費用です。しかし、ガイドラインに基づいて支払う必要のない項目がいくつかあります。そこで、退去費用で支払う必要のない項目・ある項目について解説し、具体的な事例も交えてわかりやすく説明いたします。

さらに、退去費用に異議を申し立てする方法や、削減するための方法についても触れていますので、引越し時の退去費用に疑問を感じたら、ぜひ参考にしてください。

賃貸物件の退去費用の定義

退去費用とは、賃貸借契約が終了した時に借主が貸主に支払う費用のことです。借主は、貸主に対して、賃貸物件を契約通りに使用した状態に戻す義務を負います。退去費用は、この義務を果たすために必要となる費用です。敷金や礼金とは異なり、退去費用は実際に発生した費用に基づいて支払う必要があります。

退去費用には、大きく分けて2つの種類があります。1つは、借主が故意または過失によって損傷させた部分の原状回復費用。もう1つは、経年的な劣化による損耗の範囲を超えた損耗に対する費用です。

退去費用の具体的な金額は、賃貸借契約書に記載されていることが多いです。しかし、賃貸借契約書に記載されていない場合であっても、借主は、国土交通省が定める原状回復のガイドラインに基づいて適切な金額を支払う必要があります。

退去費用で支払う必要のない項目

退去費用で支払う必要のない一般的な項目は以下の通りです。

  • 通常の損耗
    入居時にあった小さなキズや汚れは、通常損耗として認められます。例えば壁の小さな穴・カーペットの軽い汚れなど。エアコンのフィルターの汚れ、電球の交換、台所のシンクの汚れなども通常損耗に含まれます。
  • 天災による損害
    地震や台風など天災による損害は、入居者の責任ではありません。地震によって家が損壊した場合、入居者は退去費用を支払う必要はありません。
  • 設備の故障
    入居期間中に設備が故障した場合、入居者が故意または過失で故障させた場合を除き、入居者は退去費用を支払う必要はありません。水漏れやエアコンの故障などは、通常は貸主の責任となります。

通常損耗とは言えない損耗(経年的な劣化による損耗の範囲を超えた汚損破損など)に対する費用については、借主が負担する必要があるので注意です。

退去費用で支払う必要のある項目

退去時に発生する費用のうち、借主が故意または過失によって損傷させた部分の原状回復費用については、国土交通省が定める原状回復のガイドラインに従って必要最小限の修繕費を負担する義務があります。ただし、借主は不当な請求を拒否する権利もあります。ガイドラインは強制力を持たないため、最終的には貸主と借主の話し合いで決めることになります。

原状回復のガイドラインに沿った支払いの対象

国土交通省が定める原状回復のガイドラインに沿った退去費用で、支払い対象となる項目は、主に以下のとおり分類されます。

  1. 故意過失(こいかしつ)による修繕費用
    通常の使用による経年劣化は、借主の負担ではありませんが、借主の故意または過失によって発生した損傷や設備故障などは、借主が修繕費用を負担する必要があります。
  2. 特約
    契約書に特約が記載されている場合は、特約に従って退去費用を支払う必要があります。例えば、契約書に「退去時にはハウスクリーニング代としてXX円を支払うと記載されている場合は、入居者はハウスクリーニング代を支払う必要があります。

クリーニング代などの清掃費用は特約で入居者負担になっている事が多いです
ガイドライン上は貸主側の負担となっていますが、特約で入居者の負担となっている契約の方が多いです。都内の物件だと9割ほどが入居者負担。

退去費用は、借主にとって大きな出費となるため、事前に確認しておくことが重要です。契約書の内容やガイドラインを確認し、不明な点があれば物件を契約する前に管理会社(貸主)に問い合わせるようにしましょう。

退去時費用の具体的な事例

賃貸物件の退去時に、借主が支払う必要がある費用は、前述しましたが「故意過失によって生じた損傷や汚れ」に関連するものです。具体的例は以下のとおりです。

  • 過度の汚れやダメージ
    • 通常の清掃では落ちない油汚れやカビ、喫煙による臭いやヤニの汚れ。
    • ペットによるダメージ(爪で傷つけた壁や床、尿による汚れなど)。
  • 不注意による損傷
    • 破損したガラスやドアの修理費。
    • 壁に穴を開けたり、大きな傷をつけたりした場合の補修費。
  • 設備や備品の破損
    • エアコンやガスコンロなど、設置された設備の故意または過失による故障や破損。
    • 備え付けの家具や家電(照明器具、カーテンレールなど)の破損や紛失。
  • 退去時の残置物の処分費用
    • 残していった家具やゴミの処分費用。
  • 鍵の紛失・損傷
    • 鍵を紛失した場合の交換費用。
    • 鍵や錠前の損傷による交換費用。
  • 特別な装飾や改造の原状回復
    • 無断で行った壁のペイントや床のカーペットの取り付けの撤去と原状回復費用。
    • 壁に釘を打ち込んだ事による壁紙や下地の張り替え費用。

以上の事例はほんの一例であり、退去費用で支払う項目は個々のケースによって異なり、これらの費用は、契約書やガイドラインに基づいて算定されます。

法的拘束力がない事項に留意

退去費用について、ガイドラインに沿った判断をすることは大切ですが、ガイドラインには法的拘束力がないという点も留意する必要があります。ガイドラインはあくまで指針としての役割のため、貸主と借主の間で合意があれば、ガイドラインとは異なる取り決め(契約書の特約に明記)をすることも可能です。

そのため、物件のオーナーや管理会社が要求する費用や契約条件が、ガイドラインに沿っていない場合もあります。
借主としては、契約書や賃貸借契約の条項をしっかりと確認し、実際の費用請求が合理的であるかどうかを判断することが重要です。また、不明点や疑問点がある場合は、ガイドラインを参照しつつ、部屋を契約する前に管理会社やオーナーに事前に確認することが望ましいです。このようにして、無駄なトラブルを避け、納得のいく形で退去手続きを進めましょう。

これをやると退去費用が高くなるので注意

退去費用は、基本的にガイドラインに基づいて支払うものですが、状況によっては追加費用が発生する可能性があります。以下、退去費用が増加する可能性の高いケースを紹介します。

  • 壁に穴を開けたり設備機器を壊す
    画鋲レベルであれば問題ありませんが、壁に釘を打って穴を開けたり、エアコンなどの設備を故障させたり、うっかり洗面台に物を落として割ってしまった場合など、高額な修理費用が発生する可能性があります。
  • ゴミの放置がある場合
    退去時には、部屋からゴミをすべて撤去して空の状態にする必要があります。大量のゴミや粗大ゴミを放置すると、高額な処分費用がかかる場合があります。

  • 室内でタバコを吸ってヤニだらけにする
    喫煙をするとどうしても匂いが壁や床についてしまうのと、ヤニで黄ばんで汚れてしまいます。この場合、壁一面張り替えや消臭施工などによる高額請求をされてしまう可能性があるので注意です。

退去費用は、ガイドラインに基づいて支払うものですが、上記のようなケースでは、追加費用が発生する可能性があります。退去時には、部屋をきれいに掃除し、ゴミを撤去して退去費用の増加を防ぎましょう。

高額な退去費用を請求された場合の対処方法

退去費用の中には、本来支払う必要のない項目が含まれていることもあります。もし、退去費用に納得いかない場合は、異議を申し立てるとが可能です。

以下のステップを踏むことで、退去費用に対する異議を効果的に伝え、適切な対応を得ることができます。

  • 費用明細の確認
    提示された退去費用の内訳を詳細に確認し、具体的な費用項目や金額について理解します。費用の内訳が不明瞭な場合は、詳細な説明を求めましょう。
  • 写真や証拠の準備
    退去時や入居時に撮影した物件の写真や動画を用意します。これにより、物件の状態やダメージの有無を客観的に証明できます。
  • ガイドラインの参照
    国土交通省の現状回復ガイドラインを参照し、請求された費用がガイドラインに沿っているかを確認します。
  • 契約書の確認
    賃貸契約書や特約事項を確認し、費用請求に関する契約内容や取り決めを把握します。契約書に記載された内容と異なる請求がなされていないか確認。
  • 管理会社やオーナーへの連絡
    費用についての疑問や異議をオーナーや管理会社に正式に伝えます。この際、具体的な理由や証拠を添えて説明することが重要です。交渉により、費用が減額し、納得できる金額になったら支払いましょう。
  • 第三者機関への相談
    交渉が通らなかった場合は、不動産トラブルの相談窓口や消費者センターなどの第三者機関に相談してみて下さい。これらの機関は、法的なアドバイスをしてくれますので、そのアドバイスを元に再度、管理会社やオーナーに相談してみてください。
  • 法的手段の検討
    消費者センターなどに相談した旨を伝えてもなお交渉が通らなかった場合は、最終手段として、弁護士に相談し法的措置を検討したり訴訟をする事で正当な費用請求を求めることが可能です。

ガイドラインは法的拘束力はありませんが、一般的な基準として使用できますので、もし契約書に記載されていない内容で請求された場合は「トラブル防止ガイドラインには支払いの必要がないと記載されてますが、これは支払う必要が本当にあるのですか?」といった感じで交渉すると支払わなくてよくなるケースが多いです。

退去費用を削減するための方法

以下に退去費用を削減するための方法をまとめました。ポイントを押さえて、退去時費用の削減を試みましょう。

<退去費用の削減方法>

  1. 入居時に現状チェックをしっかりする
    入居時に物件の状態を詳細に記録し、写真や動画を撮影しておきましょう。これにより、退去時に損傷が既存のものであることを証明できます。管理会社によっては「現状チェックシート」など用意していたりするので、確認して書類をもらい記入して提出しましょう。
  2. 定期的なメンテナンス
    入居中にこまめに掃除したり綺麗にお部屋を使いましょう。特に水回りやエアコンのフィルター清掃などは、定期的に行うと良いでしょう。
  3. ペットや喫煙によるダメージの防止
    ペットがいる場合は、爪で壁や床を傷つけないように専用のシートを貼ったり、クッションフロアを敷いたりカーベットで床を保護しましょう。喫煙についてはヤニ汚れで壁一面張り替えなど高額請求をされるので、室内での喫煙は控えるのがベストです。
  4. 小さな修理を自分で行う
    軽微な壁の穴や傷、床の傷などは、自分で修理することができます。DIYキットを利用することで、簡単に補修が可能です。
  5. 契約内容の理解
    賃貸契約書や特約事項をしっかりと理解し、過度な請求を防ぐために支払い義務が生じるポイントを理解して対策しておきましょう。

これらの方法を実行することで、退去時の費用を最小限に抑えることができます。もし、退去時の費用で不安な人は新居探しの段階で、依頼する不動産屋さんに相談してみると良いと思います。

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【監修】中川 真吾

(株)ホンネ不動産 執行役員、Google口コミ社内No.1、不動産業界6年以上。関西出身。沢山のお客様のお部屋探しをサポートをしています。